ジャズを愛する人のブルース衝動を揺さぶる久万正子の唄

2007-11-27

小西啓一さんのライナーノーツを転載させて頂きました。


10数年前、ジャズ関係者から1枚のアルバムを手渡された。久々に手応えあるシンガーなんで是非聞いてみてよ」…くままさこ『身軽な旅』。奇抜なジャケット、盛岡のジャズ喫茶跡の土蔵での録音、そして何より天才ピアニストの渋谷毅がライナー。これは…と長年のジャズ関係者としてのカンが働いた。結果はドンピシャで、自身のオリジナル曲からトム・ウエイツ、西条八十 & 服部良一の蘇州夜曲。ジャズの枠を軽々と越える気ままな選曲と、ジャズ・ボーカルという形に捉われない唄い口は実に斬新で自由奔放。かなり魅了されてしまった。そこで僕の担当するラジオのジャズ番組にゲストとして招いた。想像通りの勝気で個性的な女丈夫。話もユニークで興味深く、これはかなりな大器、とその今後を大いに期待した。

渋谷氏もライナーでこんな風に褒めていた。「ジャズをやろうという彼女の思いが、もしかしたらレコードからこぼれちゃうんじゃないかと心配になるくらい聴こえてくる。(中略) 正直なところこのアルバムの出来にぼくは唖然としているのだが、ジャズというのはいつもこういう形で目の前に現れるものかもしれない…」と。

彼女の消息は結構気になっていたのだが、音沙汰の無いまま10数年が経過。それが本当にひょんなことからその名を久々に耳にすることになる。まことに “縁は異なもの味なもの” なのである。