漫画家、山本直樹(82gt)のこと..

2012-07-08

先月、85年卒のピアニストの南博さんの著作についてお話しましたが、今夜は小職と同期の82年卒・山本直樹(gt)さんのことをお話したいと思います。 山本さんは地味ではありましたが、グラント・グリーンみたいに良く選び抜かれた音だけを集約した、印象に残るフレーズを繰り出す良いギタリストですが、本職は「漫画家」です。 本名で描いている作品が多く、ご存知の方も多いかも。 但し、「エロ漫画」みたいなイメージで(笑)。 失礼ながら小職は山本さんの作品をマメに見ている訳ではないのですが、Grant Greenみたいな演奏をする緻密で意外と真面目な人物を知る1人としては、タダのエロ漫画では片づけられないんですね(笑)。

Wikpediaで「山本直樹」を検索すると詳しく出て来るのですが、1991年にビッグコミック・スピリッツ増刊号に連載されて、同年光文社から単行本になった『BLUE』(写真)。 この作品は作中の性描写が問題となり、東京都により不健全図書の指定を受け版元回収となったことで話題になった、との由。 「それでも作風を変えなかった」とは外部の評ですが、小職からすれば至極当然のことのような気も。 ..と言うのは、山本さんが「時代」を心眼で見たものを辛辣に、豊かな想像力を加味して表現していただけ..。 それってジャズの演奏とも通ずるものがあります。 例えば、一世を風靡したアルトのDavid Sanbornは凄くセクシーな演奏をします。 未だに若い女子の心をすぐとらえる音色.. 魅せられた男性も多く、多くのフォロワーを輩出してますよね。 でも、音楽はビジュアルでは無いから「エロス」とは言われません。

ところで、この山本さんの緻密さと真面目さがそのまんま出てる作品があるので、是非それを紹介したいと思っています。 私がいまハマってるのは『レッド』です。 さっきの『ブルー』とは対照的な作品。 これはあの激動の1970年.. 大阪万博は皆さんの記憶にもあるでしょうが、「よど号ハイジャック事件」や「三島由紀夫・割腹自殺」のあったあの1970年の少し前から、インテリの最先端である国立大学の純粋な若者たちが、どのような経緯でゲリラ闘争に走って行ったのか、をドキュメント・タッチで描いています。 登場人物はモデルになっている人々とは異なる名前ですが、本人の強い興味もあってか、非常に緻密な本人達への取材もあって、かなりリアルな内容になっています。 実は、この作品の前に山本さんは『ビリーバーズ』というのを書いてるんですが、これが例の「オウム真理教事件」にショックを受けて「何故?」の探究スピリッツが描かせたもの。 『レッド』は、その作品を契機に山本さんが自らが生きた時代に、身近にあった早大の革マル派のアジト(今は取り壊されて無くなった法学部校舎・図書館に近い旧・第2学生会館)を思い出して、徹底的な調査や取材に基づいて時間をかけて書いている、大変な力作です。

山本さんの作品のファンである人の、この『レッド』の評を紹介して終りします。 70年は小職はまだ中学1年でしたが、大先輩のチンさんは既に卒業後2年目であったわけで、この作品を呼んでいるとチンさんや増尾さんの青春時代の背景も感じて、「エネルギーにあふれた日本」を過去の歴史として感じてます。 若い人々もこの時代の出来事.. 祖父母の時代に近い話かもしれませんが、「若さ」を理解して今の自分を高めるための材料にもなろうかと思うのでお薦めです。

(レッド vol.1 評・抜粋)
『レッド』は山本の過去の作品を知るものとしては驚くほどドキュメンタリータッチに徹している。たとえば山本が唯一「社会問題を扱っているということをちょっと意識した」という『ありがとう』でさえ、女子高生コンクリート詰め殺人事件、愛知県西尾市のいじめ自殺事件、さまざまな新興宗教の事件を渾然一体のスープにしたフィクションとして描いている。ところが今回、『レッド』は当事者たちの記録からピックアップしてそれを描くということに本当に忠実である。ひとつ例をあげよう。 『レッド』1巻では、永田洋子役にあたる赤城が、デパートに入って尾行している私服を結果的にまいたあとで、ばったりとお菓子を食べているところに再び私服に出会い、赤城が「食べる?」とそのお菓子を私服に差し出すというコミカルなエピソードがある。これなどはさすがに山本のいつものトボけた調子なのだろうと思っていた。 ところがあらためて永田洋子『十六の墓標』を調べてみると、このエピソードが出てくる。そんなところにまで手記に忠実なのかとびっくりしたものである。確認できないエピソードもいくつかあったので、全てそうだとは断言できないのだが、少なくとも大半はドキュメンタリーであることは間違いない。この手法が果たして実を結ぶかどうかは、1巻では何とも言えない。中心テーマとなる山岳ベースでの生活、凄惨な「総括」のシーンはこれからだからだ。

(参考:Amazonのサイト)