武冨さん (鑑賞部 ’68) から
今回もベテランから中堅まで各国のピアニストをご紹介しましょう。
ご紹介に国別の偏りが出るのは、ジャズの盛んな国もあればそうでもない国もあることをお許しいただきます。
Enrico Pieranunzi / イタリア
Dream Dance (CAM Jazz CAMJ7815-2) イタリアを代表するベテランピアニスト。 90年代から大人気となり多くのアルバムが紹介されてきましたが、これはすべて彼のオリジナル曲ばかりで構成されています。 それ故に大いなる意欲のもとに斬新なアイデアで作られているのですが、フリーとかアバンギャルド性とは無縁ですから、あくまでも従来のジャズの流れの中でのジャズを安心してお楽しみいただけます。 スタンダードが聞きたい向きには、他のアルバムを適宜あたってもらえば外れることなく、どのようなアルバムでも彼の世界を十分楽しめます。 なお今やユーロを代表するベーシストとなったMads Vindingがリーダーを務めドラムスにAlex Rielを配した強力布陣による『The Kingdom』(Stunt Records STUCD 19703) をお勧めいたします。 ベースを学んでいらっしゃる方にはPedersen亡きあとの逸材が演じるテクが参考になるでしょう。
Georges Arvanitas / フランス
Rencontre (Sony Records SRCS8624)ギリシャ系フランス人の超ベテラン・ピアニスト。 70年代に大活躍した人なので学生の皆さんは思い出さない方もあるでしょう。 当時日本では大いに評判をとったピアニストで日本にも来ています。 また多くのアメリカの有名プレイヤーと共演をしていますので、それらのアルバムでご存知の方もあるでしょう。 久しぶりの録音 (1997年) でいい味を出しているのもベースとドラムスにアメリカのIra Colemanと Joe Chambersを迎えたからかもしれません。 このアルバムでは1曲だけケイコ・リーが歌っています。
Kasper Villaume / デンマーク
Footprints (Marshmallow MMEX-109) コテコテのハード・バッパーというとこの人抜きでは語れません。 このアルバムを聞いていると、フォービートでノリノリになってジャズを楽しむことの喜びが感じられるのです。 そうは言ってもやはりユーロの人でその教養からリリカルなピアノも聞かせます。 オリジナルとスタンダードが適宜に入っていることも楽しみの一つで、皆さんご存知のShorterの表題曲が彼なりの編曲と解釈でこのアルバムを一層面白くしています。 ついでに彼がリーダーのワン・ホーン・カルテットアルバムをご紹介します。 ニューヨクで大活躍のChris Potter (ts)、Chris Minh Doky (b)、Ali Jackson (ds) という超強力な仲間を得てのアルバムHands (Stunt Records STUCD 05122) が素晴らしく、これぞアメリカン・ハードバップの極みで、今大人気のイタリアのハード・バッパーFabrizio Bosso (tp) やFrancesco Cafiso (ts) なんて何するものぞ、とばかり、大いにやらかしてくれます。 是非ご一聴を願います。
Zsolt Kaltenecker / ハンガリー
Rainy films (ガッツプロダクション GPTS004)東欧からは彼一人だけをご紹介しておきます。 ほかにも素晴らしいピアニストはいるのですが、私の手持ちからでは十分なご案内が行き届きそうにありません。 一方でガッツプロダクションは東欧のジャズメンを日本に広く紹介してきた実績のあるところですから、その中から一枚くらいは敬意を表して紹介したいのです。 演奏は東欧だからといって珍奇なことは無く、「枯葉」などスタンダード中心に軽快なフォービートをバックにして、左手も巧みに駆使した色彩豊かなメロディーは美メロ派の心を揺さぶるでしょう。
Ivan Paduart / ベルギー
Torio Live (Virgin LC3098) 小さな国でもジャズメンは居ます、そして彼はユーロを代表するようなピアニストです。 アルバムは多数あるのですがトリオ・アルバムは少なくこれが一番良いでしょう。 ほとんどがオリジナルばかりでスタンダードはありませんが、いかにもユーロのクラシカルな素養の中で育まれた美メロが展開されます。 最新アルバムの『Blue Landscapes』(MONS MR874511) も評判が良いと聞きます。
Peter Beets / オランダ
Live at the Concertgebouw (Maxanter MAX75233) ユーロでは大人気のバップ系ピアニストです。 アルバムも多いのですが、トリオ・アルバムとしてはこの他にCriss Crossから出ているアルバムが楽しめます。 正統派バッパーで良くスイングしていますが、いかにも白人らしいノリとメロディーですから、黒人のコテコテのそれとは違ったいかにもユーロのバップ・ピアノです。
武冨 学 (鑑賞部 '68)
参考
武冨 学: ユーロのピアニスト (その1), 2013.
武冨 学: ユーロのピアニスト (その2), 2013.
武冨 学: ユーロのピアニスト (その4 最終回), 2013.
奥村・武冨 Talk Show (第52回OB総会・懇親会)
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